ノルウェーってどんな国?─ノルウェーの働き方・子育て・自然について

北欧

ノルウェーってどんな国?オーロラが見られるところ?フィヨルドとか白夜って習った気がする?

北欧の国・ノルウェーは、世界幸福度ランキングで2024年に第7位に輝いています。人口約562万人のこの国は、世界有数の石油・天然ガス産出国でありながら、そのお金を今の世代で使い切らず、未来の世代のために積み立てています。一人当たりGDPは約10万9,000ドル(2024年)と世界トップクラスですが、国民が求めているのは、物質的な豊かさよりも、家族と過ごす時間、自然の中でリフレッシュする時間、そして誰もが平等に暮らせる社会です。

この記事では、ノルウェーの働き方、子育て支援、教育制度、自然環境、そしてデジタル社会について、具体的な数字を交えながらご紹介します。「本当の豊かさとは何か」――その答えを一緒に探していきましょう。

ノルウェーってどんな国?

出典:https://isorepublic.com/photo/flag-of-norway/

ノルウェーは北ヨーロッパのスカンディナビア半島西岸に位置する立憲君主制国家です。国土面積は約38万5,207平方キロメートルで、日本とほぼ同じ大きさの国土に、約562万人(2025年推計)が暮らしています。人口密度は1平方キロメートルあたり15人と、日本の約350人と比べて非常にゆったりとした空間が広がっています。

首都はオスロで、人口は約70万人。国民の85.9%が都市部に住んでいます。公用語はノルウェー語ですが、英語も広く通じます。

経済面では、2024年の名目GDPは約6,138億ドル、一人当たりGDPは約10万9,000ドルと、世界トップレベルの経済水準を誇っています。主要産業は石油・天然ガス、水産業、海運業で、世界有数の産油国として知られています。

石油で得たお金は未来のために

ノルウェーの特筆すべき点は、石油収入の使い方です。1990年に設立された「政府年金基金グローバル」(通称:オイルファンド)に石油収入を積み立て、その運用益で国家予算をまかなっています。

石油は有限資源です。いつかは枯渇します。だからこそ、今の世代で使い切るのではなく、未来の世代のために残す――これがノルウェーの考え方です。2024年時点で、このファンドの規模は約1兆7,000億ドル(約250兆円)にまで成長しています。

そして注目すべきは、世界幸福度ランキングで2024年に第7位に輝いたことです。経済的な豊かさだけでなく、社会の公平性、人々の生活満足度、信頼度の高さなど、総合的な幸福度が評価されています。

フィヨルドと白夜の国――圧倒的な自然美

ノルウェーといえば、何と言ってもフィヨルドです。氷河によって削られた深い谷に海水が入り込んでできたフィヨルドは、世界遺産にも登録されている絶景です。全長204キロメートルに及ぶソグネフィヨルドをはじめ、数多くのフィヨルドがノルウェーの海岸線を彩っています。

国土の約37%が森林で覆われ、氷河、山、湖、そして海――ノルウェーはあらゆる自然が詰まった国です。北極圏に位置するため、夏は白夜(太陽が沈まない日々)、冬は極夜(太陽が昇らない日々)を経験できます。

オーロラと白夜――極北の自然現象

ノルウェー北部では、冬にオーロラを見ることができます。緑や赤、紫に輝く光のカーテンが夜空に広がる光景は、一生に一度は見たい絶景です。

一方、夏の白夜も不思議な体験です。真夜中でも太陽が沈まず、24時間明るい日々が続きます。夜中の3時にハイキングを楽しんだり、深夜に釣りをしたり――時間の概念が変わる特別な季節です。

「自然享受権」で誰でも自然を満喫

ノルウェーにも「自然享受権」があり、私有地であっても自然を傷つけない限り、誰でも自由にハイキング、ベリー摘み、キノコ狩り、釣り、テント泊を楽しめます。

週末になると、多くのノルウェー人が山や森に出かけます。冬はクロスカントリースキー、夏はハイキング。自然の中で過ごす時間が、ノルウェー人の心の支えになっているのです。

環境先進国としての取り組み

ノルウェーは環境先進国としても知られています。電力の約95%を水力発電でまかない、電気自動車の普及率は世界トップクラス。2025年までに新車販売をすべて電気自動車にする目標を掲げています。豊かな自然を次世代に残すため、環境保護に真剣に取り組んでいるのです。

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働き方:週33時間労働で高い生産性を実現

ノルウェーの法定労働時間は週40時間ですが、現地の慣習では週33.6~37.5時間が一般的です。OECD調査によると、ノルウェーの週平均労働時間は33.6時間で、年間労働時間は約1,420時間(2012年)となっています。

これは日本の年間約1,607時間(2022年)と比べて、年間で約190時間も短い計算です。つまり、年間で約24日分も多く、自分の時間を持てることになります。

典型的な勤務時間は8時~16時です。朝は早いですが、16時には仕事を終えて帰宅できます。子どもを保育園に迎えに行き、家族と夕食を食べ、趣味や運動を楽しむ時間が十分にあります。

残業は年間200時間以内と法律で厳格に制限されており、しかも残業代は通常の40%増しで支払われます。残業をしないで済むように、効率的に仕事を進めることが重視されているのです。

フレキシブルな働き方

ノルウェーでは、82%の企業がフレックスタイム制またはフルフレックス制を導入しており、78%の企業でリモートワークが認められています。そして、93%の企業が「自社の生産性が高い」と回答しています。

柔軟な働き方が認められているため、家族の状況やライフスタイルに合わせて、働く時間や場所を調整できます。こうした働き方が、ワークライフバランスと高い生産性の両立を可能にしているのです。

年間5週間の有給休暇

ノルウェーでは、最低でも年間5週間(25日)の有給休暇が法律で保障されています。夏には3~4週間の連続休暇を取る権利があり、多くの人が7月に長期休暇を楽しみます。山小屋(ヒュッテ)で過ごしたり、フィヨルドをカヤックで巡ったり、海外旅行に出かけたり――しっかり休むことで、また仕事への意欲が湧いてくるのです。

世界初「パパ·クオータ制度」で父親も育児

ノルウェーでは、父親の育児休暇取得率が約75%に達しています。1993年まではわずか4%でしたが、ある制度の導入により劇的に改善しました。それが世界初の「パパ・クオータ制度」です。

パパ・クオータ制度とは、育児休暇の一定期間を「父親専用」として割り当てる制度です。父親が取得しなければ、その期間分の権利は消滅し、母親が代わりに取得することはできません。

ノルウェーでは、両親合わせて49週間(給与の100%支給)または59週間(給与の80%支給)の育児休暇を取得できます。このうち、15週間(約3.5ヶ月)が父親専用期間として設定されています(2024年現在)。

「せっかくの育児休暇が無駄になってはもったいない」という心理が働き、多くの父親が積極的に育休を取得するようになりました。平日のオスロでは、ベビーカーを押して颯爽と歩く男性の姿が日常的に見られます。

意識の変化

1988年、ノルウェーの95%の男性が「家事は女性の仕事である」と回答していました。しかし2007年、同じ質問に対して「家事は女性の仕事である」と回答した男性は48%にまで減少しました。

パパ・クオータ制度は、男性の意識に大きな変化をもたらしたのです。育児は両親が平等に行うもの――この考え方が、社会全体に浸透しています。

待機児童ゼロの社会

ノルウェーでは、自治体は親が保育園への入園を希望した場合、必ず用意しなければならないと法律で規定されています。日本のような待機児童問題は存在しません。1歳から保育園に入れることができ、保育料は所得に応じて決まります。子育てと仕事の両立を、社会全体で支える仕組みが整っているのです。

大学まで無償――平等を重視する教育

ノルウェーの教育は、6歳から16歳までの義務教育(10年間)だけでなく、高校(3年間)、大学までの授業料が完全無償です。義務教育期間中は給食費も無料で、教科書も無償で提供されます。

大学生には、月額約1万2,000クローネ(約18万円)の奨学金と貸与金が支給されます。経済的な心配をせずに、誰もが平等に教育を受けられる環境が整っています。

競争ではなく協力

ノルウェーの教育は、競争よりも協力を重視します。小学校では成績がつかず、他の生徒と比較されることもありません。一人ひとりの個性を尊重し、自分のペースで学ぶことが大切にされています。

高校・大学にも入学試験はなく、基礎学校や高校の成績で合否が決まります。日本のような受験戦争はなく、塾や予備校に通う文化もありません。

平等を重視する社会

ノルウェーは徹底した平等主義の国です。教育の機会は経済状況に関わらず平等に与えられ、すべての子どもに可能性が開かれています。こうした教育理念が、社会全体の信頼度と幸福度を高めているのです。

山小屋で過ごす週末――ノルウェー流の休日

ノルウェー人の多くは、山や森、湖のほとりに「ヒュッテ」と呼ばれる山小屋を持っています。電気や水道が通っていないこともある質素な小屋ですが、そこがノルウェー人にとって心の故郷なのです。

週末や長期休暇には、ヒュッテで過ごす時間を大切にします。冬はクロスカントリースキー、夏はハイキングや釣り。暖炉の火を囲んで家族と語り合い、自然の中で心身をリフレッシュします。

アウトドア大国

ノルウェー人はアウトドア活動が大好きです。「天気に悪い日はない、服装が悪いだけだ」という言葉があるほど、どんな天候でも外で過ごすことを楽しみます。

冬はスキー、夏はハイキング、釣り、カヤック。子どもたちも小さい頃から自然の中で遊び、四季折々のアクティビティを体験します。自然と共に生きる――これがノルウェー流のライフスタイルなのです。

「コセリ」という幸せ

ノルウェーには「コセリ」という言葉があります。これは「居心地の良い時間」「心地よくゆったりと過ごす時間」を意味します。家族や友人と過ごす温かい時間、自然の中で静かに過ごす時間――こうした何気ない瞬間に幸せを見出すことが、ノルウェー流の生き方なのです。

デジタル先進国としての取り組み

ノルウェーは国連の電子政府ランキング(2022年)で第9位にランクインする、デジタル先進国です。行政手続きの多くがオンラインで完結し、国民は電子IDを使って、税金の申告、医療予約、公共サービスの利用などにアクセスできます。

キャッシュレス社会

ノルウェーもキャッシュレス化が進んでおり、多くの店舗やレストランでクレジットカードやモバイル決済が普及しています。公共交通機関も電子チケットが主流で、現金を使う機会は少なくなっています。

職場のデジタル化

ノルウェーの職場では、クラウドベースのツールやオンライン会議システムが広く活用されています。リモートワークのためのインフラが整っており、場所を選ばずに働ける環境が実現しています。

デジタル技術を効果的に活用することで、短時間で高い生産性を実現し、ワークライフバランスを保つことができるのです。ただし、ノルウェーでもデジタル化は「手段」であって「目的」ではありません。人間中心のアプローチを大切にしながら、技術を活用しているのです。

まとめ:日本とノルウェーの違い

出典:https://unsplash.com/ja/

ここまでご紹介してきたノルウェーと日本の違いを、わかりやすく表にまとめました。

項目ノルウェー日本
人口約562万人約1億2,500万人
世界幸福度ランキング第7位(2024年)第51位(2024年)
一人当たりGDP約10万9,000ドル(2024年)約3万5,390ドル(2023年)
週労働時間法定40時間、実質平均33.6時間法定40時間
年間労働時間約1,420時間(2012年)約1,607時間(2022年)
年次有給休暇最低5週間(25日、完全消化が原則)平均付与17.6日、取得率は約60%程度
育児休暇49週(給与100%)/59週(給与80%)原則1年間(最長2年)
パパ・クオータ15週間(父親専用期間)制度なし
男性育休取得率約75%約30.1%(2023年度)
教育費大学まで無償(給食費含む)義務教育は無償(高校は実質無償化)、大学は有料
電子政府ランキング第9位(2022年)第14位(2022年)

この表を見ると、ノルウェーと日本では、豊かさの定義、働き方、子育て、教育に対する考え方に大きな違いがあることがわかります。

ノルウェーが世界幸福度ランキング上位にランクインし続ける理由は、一人当たりGDPが世界トップクラスだからではありません。石油で得たお金を未来のために残し、短時間で効率的に働き、家族と過ごす時間を大切にし、誰もが平等に教育を受けられる社会――これらすべてが、人々の幸福度を高めているのです。

「お金は今の世代で使い切るのではなく、未来のために残す」「短時間で効率的に働く」「父親も母親も平等に子育てに参加する」「教育の機会は経済状況に関わらず平等であるべき」「自然の中で過ごす時間を大切にする」といったノルウェーの価値観には、日本社会が学べることがたくさんあるのではないでしょうか。

ノルウェー人が大切にしているのは、物質的な豊かさよりも、心の豊かさです。山小屋で家族と過ごす時間、フィヨルドの美しい景色を眺める時間、自然の中で静かに過ごす時間――こうした瞬間にこそ、本当の幸せがあると信じているのです。

「本当の豊かさとは何か」――その答えを探すヒントが、北欧の国にはあふれています。

参考資料
・外務省「ノルウェー基礎データ」
・国連「World Happiness Report 2024」
・OECD労働統計
・労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2024」
・厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」
・ノルウェー統計局公式データ
・電通総研「育児のこれから」のヒントの宝庫。ノルウェーの仕事と家族のありかた」(2022年)
・Visit Norway(ノルウェー観光局)

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