デンマークってどんな国?ヒュッゲって言葉がある国?レゴの発祥の地?一人当たりGDPが日本の2倍って本当?
北欧の国・デンマークは、世界幸福度ランキングで常に上位(2024年は第2位)にランクインする国です。人口約600万人のこの小さな国では、週37時間労働が標準で、16時には多くの人が仕事を終えて帰宅します。年間5週間の有給休暇は完全消化が当たり前。それでいて労働生産性は日本よりも高く、一人当たりGDPは日本の約2倍です。
この記事では、デンマークの働き方、教育制度、子育て支援、自然環境、デジタル社会について、具体的な数字を交えながらご紹介します。「短時間で高い成果を出す」「仕事も家庭も大切にする」――そんなデンマーク流の生き方を一緒に見ていきましょう。
デンマークってどんな国?

デンマークは北ヨーロッパに位置する立憲君主制国家です。国土面積は約4万2,956平方キロメートルで、九州とほぼ同じ大きさの国土に、約600万人が暮らしています。人口密度は1平方キロメートルあたり141人と、日本の約350人と比べてゆったりとした空間が広がっています。
首都はコペンハーゲンで、人口は約66万人。国民の87.4%が都市部に住んでいます。公用語はデンマーク語ですが、ほとんどの国民が英語を流暢に話します。
経済面では、2024年の名目GDPは約4,295億ドル、一人当たりGDPは約7万2,000ドルと、非常に高い経済水準を維持しています。主要産業は製造業、サービス業で、LEGO、カールスバーグ(ビール)、ノボ・ノルディスク(製薬)など、世界的に有名な企業が多数あります。
そして最も注目すべきは、世界幸福度ランキングで2024年に第2位に輝いたことです。長年にわたり常に上位にランクインしており、国民の生活満足度、社会の信頼度、ワークライフバランスが非常に高い評価を受けています。
自転車の国、デンマーク――自然と調和した暮らし
デンマークは、ユトランド半島と約400の島々から成る国です。最高標高がわずか170メートルという平坦な地形で、どこまでも続く緑の牧草地、風車、そして海岸線が特徴的な風景を作り出しています。
国土の約63%が農地で、森林は約14%。北欧の他の国と比べると森林は少ないですが、その分、開けた田園風景が広がり、どこまでも見渡せる空の広さを感じられます。
世界一の自転車大国
デンマークは「世界一の自転車大国」として知られています。首都コペンハーゲンでは、通勤・通学の約62%が自転車を利用しており、人口よりも自転車の数の方が多いほどです。
街中には自転車専用レーンが完備され、信号も自転車用に設置されています。雨の日も雪の日も、デンマーク人は自転車に乗ります。環境に優しく、健康的で、渋滞もなく、駐車場を探す必要もない――自転車は最高の移動手段なのです。
子どもを乗せた自転車、買い物の荷物を積んだ自転車、通勤途中の自転車。朝のコペンハーゲンは、自転車で埋め尽くされます。自転車文化は、デンマーク人のライフスタイルそのものと言えるでしょう。
海に囲まれた島国
デンマークは海に囲まれた国で、海岸線の総延長は約7,300キロメートルにも及びます。どこにいても海が近く、週末には海辺の別荘(サマーハウス)で過ごす人も多くいます。
夏にはビーチで泳いだり、カヤックを楽しんだり。デンマーク人にとって、海は身近な存在であり、自然と触れ合う大切な場所なのです。
週37時間労働で高い生産性を実現する秘密
デンマークの法定労働時間は週37時間です。月曜日から木曜日は1日7時間30分、金曜日は7時間というのが一般的な働き方です。朝9時に出社すれば、金曜日は16時に退社できます。
実際のデータを見ると、OECD調査によるデンマーク人の平均労働時間は週33時間と、法定労働時間よりもさらに短いという結果が出ています。これは残業がほとんどないことを意味しています。
16時退社が当たり前
デンマークでは、16時から17時には多くの人が仕事を終えて帰宅します。子どもを保育園や学校に迎えに行き、夕食を作り、家族と過ごす時間を大切にします。
残業はほとんどなく、もし残業が必要な場合は事前に上司に相談し、承認を得る必要があります。残業代は必ず支払われますが、そもそも残業をしないで済むように、効率的に仕事を進めることが重視されています。
短時間で高い生産性を実現する理由
デンマーク人はどのようにして短時間で高い生産性を実現しているのでしょうか。その秘密は「対話」と「信頼」にあります。
デンマークの職場では、上司と部下が対等な立場で対話します。ファーストネームで呼び合い、意思決定はチーム全員で話し合って行います。フラットな組織構造により、無駄な承認プロセスが省かれ、迅速に物事が進みます。
また、デンマークでは「成果」が評価されます。労働時間の長さではなく、何を達成したかが重要です。だからこそ、効率的に仕事を終わらせ、早く帰ることが奨励されるのです。
年間5週間の有給休暇
デンマークでは、年間5週間(25日)の有給休暇が法律で保障されています。そして重要なのは、この休暇を完全に消化するのが当たり前だということです。
夏には3週間以上の連続休暇を取る権利があり、多くの人が7月に長期休暇を楽しみます。この期間、企業や店舗も休業するため、社会全体がバケーションモードになります。
デンマーク人にとって、休暇は「贅沢」ではなく「権利」です。しっかり休むことで、また仕事に対する意欲や創造性が高まると考えられているのです。
平等と個性を重視するデンマークの教育
デンマークの教育は、幼稚園から大学まで原則無償です。6歳から16歳までの10年間が義務教育で、公立学校では授業料、教科書代、給食費すべてが無料です。
高校(3年間)と大学も無償で、さらに大学生には月額約6,000デンマーククローネ(約13万円)の奨学金が支給されます。この奨学金は返済不要で、親の収入に関係なく全員に支給されます。
競争ではなく協力を学ぶ
デンマークの教育で最も特徴的なのは、競争よりも協力を重視する点です。小学校では成績がつかず、テストもほとんどありません。クラス内での順位もなく、他の生徒と比較されることもありません。
授業はグループワークが中心で、生徒同士が協力して問題を解決することを学びます。間違えても叱られることはなく、むしろ間違いから学ぶことが奨励されます。
フォルケホイスコーレという選択肢
デンマークには「フォルケホイスコーレ」という独特の教育機関があります。これは17.5歳以上なら誰でも入学できる全寮制の学校で、試験も成績もありません。
期間は数週間から1年間で、芸術、スポーツ、政治、環境など、自分の興味のあるテーマを深く学びます。「人生のための学校」と呼ばれ、自分自身と向き合い、生き方を考える場所として多くの若者が利用しています。
高校卒業後、すぐに大学に進学するのではなく、フォルケホイスコーレで1年間過ごし、自分の人生について考える――そんな選択肢があることが、デンマークの教育の豊かさを物語っています。
子育てしやすい社会を支える充実した制度
デンマークでは、父親が育児休暇を取得するのは当たり前です。男性の育児休暇取得率は約80%に達しています。
父親は出産後2週間の「産後休業」を取得でき、その後、両親で合計32週間の「育児休業」を分け合うことができます。この32週間は夫婦で自由に配分できるため、父親が数ヶ月間取得することも珍しくありません。
育児休暇中は、収入の一定割合が育児休暇手当として支給されます。2024年現在、時給126.89クローナ(約2,800円)が上限で、週37時間のフルタイム換算で計算されます。
充実した保育制度
デンマークでは、生後6ヶ月から子どもを保育園に預けることができます。保育園の質は非常に高く、保育士の資格要件も厳格です。
保育料は所得に応じて決まり、低所得世帯は無料または大幅に減額されます。多くの保育園は朝7時から夕方5時まで開いており、働く親を強力にサポートしています。
仕事と家庭を両立できる環境
デンマークでは、仕事と家庭の両立は「女性だけの問題」ではありません。短い労働時間、充実した育児休暇、質の高い保育園――これらの制度が揃っているからこそ、男性も女性も平等に働き、平等に子育てに参加できるのです。
ヒュッゲな時間を楽しむ――デンマーク流の休日
デンマークには「ヒュッゲ(Hygge)」という独特の概念があります。これは「心地よい」「温かい」「居心地が良い」といった意味を持つ言葉で、デンマーク人の暮らしの中心にある価値観です。
キャンドルを灯して家族や友人とゆっくり食事をする時間、暖炉の前でコーヒーを飲みながら本を読む時間、雨の日に家で過ごす時間――こうした何気ない日常の中に幸せを見出すのが、ヒュッゲの精神です。
サマーハウスでの夏休み
デンマークにも、森や海辺に建つサマーハウス(別荘)があります。多くの家庭が週末や夏休みにサマーハウスで過ごし、自然の中でゆったりとした時間を楽しみます。
サマーハウスでは、バーベキューをしたり、海で泳いだり、自転車で周辺を散策したり。デジタル機器から離れ、家族や友人との会話を楽しむ時間が、心の充電期間となります。
日常の中の小さな幸せ
デンマーク人は、特別なイベントよりも、日常の中の小さな幸せを大切にします。仕事終わりに友人とカフェでおしゃべりする時間、週末に家族で自転車に乗って公園に行く時間、夕食後に子どもと一緒にボードゲームをする時間。こうした何気ない瞬間に幸せを感じられることが、世界一幸せな国の秘密なのかもしれません。
高度にデジタル化された社会
デンマークは世界でも最もデジタル化が進んだ国の一つです。行政手続きのほとんどがオンラインで完結し、国民は電子IDを使って、税金の申告、医療予約、公共サービスの利用など、あらゆる手続きを自宅から行えます。
デンマークには「NemID」(現在は「MitID」に移行)という電子ID システムがあり、銀行取引、公的書類の署名、オンライン投票まで、幅広く活用されています。
キャッシュレス社会
デンマークもキャッシュレス化が進んでおり、多くの店舗やレストランではクレジットカードやモバイル決済が主流です。小さな商店でも現金を受け付けないところが増えています。
モバイルペイメントアプリ「MobilePay」は国民の大多数が利用しており、友人間の割り勘から、フリーマーケットでの支払いまで、あらゆる場面で活用されています。
職場のデジタル化
デンマークの職場では、デジタルツールが積極的に活用されています。リモートワークのためのインフラが整っており、多くの企業がフレキシブルな働き方を実現しています。
会議資料はすべてデジタルで共有され、承認プロセスもオンラインで完結します。こうしたデジタル化により、無駄な事務作業が削減され、短時間で高い生産性を実現しているのです。
ただし、デンマークでもデジタル化は「手段」であって「目的」ではありません。人と人とのつながりや対話を大切にしながら、便利なツールとして技術を活用する――そんなバランス感覚が、デンマーク流のデジタル社会なのです。
まとめ:日本とデンマークの違い

ここまでご紹介してきたデンマークと日本の違いを、わかりやすく表にまとめました。
| 項目 | デンマーク | 日本 |
| 人口 | 約600万人 | 約1億2,500万人 |
| 世界幸福度ランキング | 第2位(2024年) | 第51位(2024年) |
| 一人当たりGDP | 約7万2,000ドル(2024年) | 約3万5,390ドル(2023年) |
| 週労働時間 | 法定37時間、実質平均33時間 | 法定40時間 |
| 年次有給休暇 | 年間5週間(25日、完全消化が原則) | 平均付与17.6日、取得率は約60%程度 |
| 育児休暇 | 産後休業2週間+両親で32週間を分割 | 原則1年間(最長2年) |
| 男性育休取得率 | 約80% | 約30.1%(2023年度) |
| 教育費 | 大学まで無償(給食費含む、奨学金月約13万円支給) | 義務教育は無償(高校は実質無償化)、大学は有料 |
| 教育の特徴 | 競争より協力、成績なし(小学校) | 受験競争、偏差値重視 |
| 主な移動手段 | 自転車(コペンハーゲン62%) | 自動車、電車 |
この表を見ると、デンマークと日本では、働き方、教育、子育てに対する考え方に大きな違いがあることがわかります。
デンマークが世界幸福度ランキング常連の国である理由は、経済的な豊かさだけではありません。短時間で効率的に働き、家族と過ごす時間を大切にする文化、大学まで無償の教育制度、父親も母親も平等に子育てに参加できる社会――これらすべてが、人々の幸福度を高めているのです。
もちろん、デンマークの制度をそのまま日本に導入することは難しいかもしれません。文化や社会の仕組みが異なるからです。
しかし、「労働時間の長さではなく成果で評価する」「効率的に働き、しっかり休む」「競争ではなく協力を重視する」「仕事も家庭も大切にする」といったデンマークの価値観には、日本社会が学べることがたくさんあるのではないでしょうか。
デンマーク人が大切にしているのは、「ヒュッゲ」な時間です。家族や友人と過ごす心地よい時間、キャンドルを灯してゆっくりと食事をする時間、自転車で街を走る時間――こうした日常の中の小さな幸せを大切にすることが、人生を豊かにしてくれるのです。
「もっと効率的に働きたい」「家族との時間を増やしたい」「幸せを感じられる暮らしがしたい」――そんな願いを実現するヒントが、北欧の小さな国にはあふれています。
参考資料
・外務省「デンマーク基礎データ」
・JETRO「デンマーク概況」(2025年7月)
・国連「World Happiness Report 2024」
・厚生労働省「広報誌『厚生労働』2024年4月号」
・デンマーク統計局公式データ
・OECD労働統計
・Living in Denmark(デンマーク在住者による情報サイト)
・Visit Denmark(デンマーク観光局)


コメント