スウェーデンってどんな国?─スウェーデンの働き方・子育て・自然について

北欧

スウェーデンってどんな国?税金が高いんじゃないの?子育てしやすいって本当?17時には職場に誰もいないって本当?

北欧の国・スウェーデンには、働き方、子育てなど日本の人々が抱えている悩みを解決するヒントがたくさんあります。人口約1,059万人(2025年5月時点)のこの国では、仕事も家庭も大切にする働き方が当たり前。週40時間の労働時間をきっちり守り、年間5週間の有給休暇を完全に消化します。男性の育児休暇取得率は90%を超え、父親も母親も平等に子育てに参加しているのです。

この記事では、スウェーデンのあれこれについてご紹介します。

スウェーデンってどんな国?

出典:pixabay(https://pixabay.com/ja/)

スウェーデンは北ヨーロッパのスカンジナビア半島に位置する王国です。国土面積は約45万平方キロメートルで、日本よりも少し広い国土に、約1,059万人が暮らしています。人口密度は1平方キロメートルあたり26人と、日本の約350人と比べて非常にゆったりとした空間が広がっています。

首都はストックホルムで、人口は約99万人(2025年3月時点)。国民の87.4%が都市部に住んでいます。公用語はスウェーデン語ですが、英語も広く使われており、国際的なコミュニケーションも活発です。

経済面では、2024年の名目GDPは約6,101億ドル、一人当たりGDPは約5万7,625ドルと、高い経済水準を維持しています。主要産業は製造業、サービス業、情報通信業で、IKEAやH&M、Spotifyなど、世界的に有名な企業も数多く生まれています。

また、スウェーデンは世界経済フォーラムが発表するジェンダー・ギャップ指数で第5位(2024年)にランクインしており、男女平等が進んだ社会としても知られています。

豊かな自然に囲まれた「森と湖の国」

スウェーデンは「森と湖の国」と呼ばれるほど、豊かな自然に恵まれています。国土の約53%が森林で覆われ、約9%を湖や河川が占めています。湖の数はなんと約9万以上。森を歩けば野生のブルーベリーやキノコに出会え、湖では泳いだり釣りを楽しんだりできます。

首都ストックホルムは14の島々から成る水の都で、「北欧のヴェニス」とも称される美しい街です。市全体の30%が公園や緑地帯で、ヨーロッパでも最も緑が多い都市の一つ。大都市でありながら、すぐそばに自然があるのがスウェーデンの特徴です。

誰でも自然を楽しめる「自然享受権」

スウェーデンには「自然享受権」という独特の権利があります。これは、たとえ私有地であっても、自然環境を傷つけず他人に迷惑をかけない限り、誰でも自由に森や野原を散策し、ベリーやキノコを採ったり、テントを張って宿泊したりしてもいいという権利です。

カヌーやボート、釣りなども自由に楽しめます。柵で区切られた私有地は少なく、自然はみんなで分かち合うものという考え方が根付いています。

自然と共に育つ子どもたち

スウェーデンでは、幼い頃から自然の中で遊び、学ぶ教育が行われています。子どもたちは森で動物や植物について学び、五感で自然を体験します。こうした経験が、高い環境意識を育む土台になっているのです。自然と触れ合うことで、人間も自然の一部であることを実感し、環境を大切にする心が自然と芽生えていきます。

心地よく働く――スウェーデンの労働環境

法定労働時間は週40時間まで

スウェーデンの労働時間法では、週40時間が法定労働時間の上限です。残業は4週間で48時間以内、年間200時間以内と厳格に制限されています。2023年のデータでは、フルタイム労働者の週平均労働時間は約40時間で、年間労働時間は約1,419時間(2022年)となっています。

スウェーデンでは、17時になるとオフィスから人がいなくなるのが普通です。残業は「仕事ができない人」と見られることもあり、定時で帰るのが当たり前の文化が根付いています。

多くの企業でフレックスタイム制が導入されており、2013年の調査では企業の約半数が80%以上の従業員にフレックスタイム制を提供しています。7時から9時の間に始業し、15時から17時の間に退社する権利が保障されているため、子どもの送り迎えなどライフスタイルに合わせた働き方が可能です。

有給休暇は最低25日、完全消化が原則

年次有給休暇法により、最低でも年間25日(国家公務員は6週間)の有給休暇が保障されています。6月から8月の間に連続4週間の休暇を取る権利があり、多くの人が夏のバケーションを楽しんでいます。

休暇は少しずつ消化するのではなく、まとまった期間で取得するのが一般的です。3~4週間の長期休暇を利用して、サマーハウス(別荘)で過ごしたり、海外旅行に出かけたりします。

一部の企業や自治体では、1日6時間労働制の導入実験も行われています。2015年からヨーテボリ市の老人ホームで実施された実験では、欠勤が大幅に減り、生産性と労働者の健康が改善されたという報告があります。労働時間を短くすることで、かえって集中力が高まり、効率が上がることが示されています。

自然と共に過ごす休日

出典:pixabay(https://pixabay.com/ja/)

日常の中にある自然との触れ合い

スウェーデン人にとって、自然の中で過ごすことはライフスタイルの一部です。週末や平日の夕方、森を散策したりジョギングをしたりして、自然と触れ合う時間を大切にしています。森でブルーベリーやキノコを採ったり、湖で泳いだり、カヌーを楽しんだり。都会に住んでいても、少し歩けば自然があるため、気軽に野外活動を楽しめます。

「サマーハウス」で過ごす長期休暇

スウェーデンの夏の過ごし方で欠かせないのが「サマーハウス」です。サマーハウスとは、森や湖のほとりに建つ夏用の別荘のこと。日本の別荘とは違い、豪華な建物ではなく、むしろ質素で簡素な小屋のようなものが一般的です。

多くは代々受け継がれてきた古い家で、水洗トイレがなかったり、電気が限られていたり、インターネット環境がなかったりと、都会の便利な生活とは正反対。しかし、それこそがサマーハウスの魅力です。

7月から8月にかけて、多くの人が4~6週間の夏休みを取り、家族でサマーハウスに滞在します。そこでは、湖で泳いだり、森でベリー摘みをしたり、バーベキューをしたり、ハンモックで昼寝をしたり。「何もしないこと」が最高の贅沢なのです。

サマーハウスでの時間の使い方

サマーハウスでは、家のメンテナンスやリフォームに時間を費やす人も多くいます。ペンキを塗り直したり、デッキを修繕したり、庭の手入れをしたり。DIYが得意なスウェーデン人は、自分の手で家を大切に手入れし、次の世代へと受け継いでいきます。

また、夏至祭(ミッドサマー)もサマーハウスで過ごす重要なイベントです。6月下旬の最も日照時間が長い日に、地域の人々が集まり、花で飾ったポールの周りを踊って夏の訪れを祝います。

サウナも人気のアクティビティです。多くのサマーハウスにはサウナが設置されており、サウナで温まった後、湖に飛び込んで体を冷やします。原始的で開放的なこの体験は、都会生活では味わえない特別な時間です。

都会の喧騒から離れ、自然の中で過ごす時間。便利さから離れることで、かえって人間本来の生物的感覚を取り戻し、心身ともにリフレッシュできる――それがスウェーデン流の休日の過ごし方なのです。

子育てを社会全体で支える仕組み

世界トップクラスの育児休暇制度

スウェーデンの育児休暇制度は「両親保険」と呼ばれ、子ども一人につき最長480日の有給休暇を両親で分け合うことができます。

このうち390日分は収入の約80%が保障され、残りの90日は1日あたり180クローナ(約2,500円)の定額が支給されます。そして重要なのが、父親と母親それぞれに90日間が専用で割り当てられており、相手に譲渡することができない点です。使わなければ消滅してしまうため、男性も積極的に育児休暇を取得する仕組みになっています。

平日のストックホルムでは、ベビーカーを押して颯爽と歩く男性や、公園で子どもと遊ぶ父親の姿が日常的に見られます。「子育ては両親が平等に行うもの」という考え方が、社会全体に深く根付いています。

その他の充実した子育て支援

2024年7月1日から、スウェーデンでは画期的な新制度がスタートしました。両親が受け取る育児手当の一部を祖父母に譲渡できる「祖父母手当」です。子どもが1歳になるまでの間に最大45日間を祖父母に譲渡でき、祖父母も有給で孫の世話ができるようになりました。

この制度は、家族内のケア労働を適切に評価し、家族に柔軟性と選択肢を提供する新しい形の支援として注目されています。

また、子どもが8歳(公務員は12歳)になるまで、労働時間を75%まで短縮できる制度があります。また、子どもが病気のときには看護休暇を取得でき、有給休暇を使う必要はありません。

さらに、第1子出産後30ヶ月以内に第2子を出産した場合、第2子の育児休業中の給付金が第1子と同額になる「スピード・プレミアム制度」もあり、複数の子どもを持つ家庭への配慮も行き届いています。

大学まで無償――平等を重視する教育システム

基礎学校から大学まで授業料無料

スウェーデンの教育制度の最大の特徴は、7歳から16歳までの義務教育(基礎学校9年間)だけでなく、高校(3年間)、大学(学士号取得は通常3年間)までの授業料が完全無償である点です。

義務教育期間中は給食費も無料で、教科書も支給されます。さらに、公立・私立を問わず文房具まで無料で提供されるため、保護者の経済的負担は最小限に抑えられています。

大学生の場合、フルタイムで勉強していれば、給付型奨学金約1万円と返済型奨学金約2万5,000円が毎週支給されます。これらは所得水準に関係なく、希望者すべてに支給されますが、1学期間に必要単位の75%を取得しなければ次の学期は支給されないため、学生は真面目に勉強するインセンティブが働いています。

個性を尊重する教育方針、入学試験はありません

義務教育期間中も飛び級や留年があり、生徒の能力や個性を尊重した教育が行われています。授業は教師が教壇に立つスタイルではなく、グループ学習や個人学習が中心で、一人ひとりの学びのプロセスを大切にしています。

スウェーデンの高校には入学試験がなく、希望者全員が進学できます。大学も入学試験はなく、基礎学校や高校の成績によって合否が決まります。そのため、日本のように塾や予備校に通って受験勉強をする人はほとんどいません。

高校卒業後に1年間のギャップイヤーを取って世界を旅したり、一度就職してから大学で学び直したりと、一人ひとりが自分のペースで進路を選択できる環境が整っています。

高い税金で実現する「ゆりかごから墓場まで」の安心

スウェーデンの充実した社会福祉制度は、高い税金によって支えられています。消費税にあたる付加価値税は25%(食品は12%、書籍・新聞などは6%)と高く、所得税も累進課税制度により高所得者ほど高くなります。

しかし、その代わりに医療費はほぼ無料(高額療養費制度により年間上限あり)、教育費は大学まで無料育児休暇中の収入も保障されるなど、生涯にわたって安心して暮らせる仕組みが整っています。

「税金は高いけれど、その分安心して暮らせる」――これが多くのスウェーデン国民の実感です。経済的背景に関わらず、すべての人が平等にサービスを受けられる社会を実現するため、国民は高い税金を受け入れているのです。

スウェーデンのIT事情

世界トップクラスの電子政府

スウェーデンは2022年の国連電子政府ランキングで第5位に位置づけられており、北欧諸国の中でもデジタル化が進んだ国として知られています。社会全体にセキュアなネットワークが張り巡らされ、国民の日常生活のあらゆる場面でデジタル技術が活用されています。

国民一人ひとりには出生時にパーソナルナンバー(個人認識番号)が割り当てられ、このナンバーと個人情報、銀行口座を統合した「Bank ID」という電子IDシステムが広く利用されています。Bank IDがあれば、行政手続きや医療サービス、銀行取引、契約などのあらゆる場面で本人確認がスムーズに行えます。

キャッシュレス化が生み出した新しい社会

スウェーデンは「現金が消えた国」とも呼ばれています。街中には「現金お断り」の看板を掲げる店も珍しくなく、公共交通機関では現金が使えません。2010年から2012年にかけて約900台のATMが撤去されるなど、現金を扱わない前提の社会へと移行しています。

キャッシュレス化を加速させたのが、2012年に複数の銀行が共同開発した個人送金サービス「Swish」です。携帯電話番号と銀行口座を紐付けるだけで、個人間での送金が即座にできるこのサービスは、スウェーデン全人口の60%以上が利用しています。友人との割り勘、子どものお小遣い、フリーマーケットでの支払いまで、あらゆる場面でSwishが使われています。

職場でのIT活用

スウェーデンの職場では、ペーパーレス化が徹底されています。会議資料はすべてデジタルで共有され、承認や契約もオンラインで完結します。電子署名が法的に認められているため、重要な契約書類も紙に印刷する必要がありません。

リモートワークやテレワークのためのITインフラも充実しており、新型コロナウイルス感染症が流行する前から、多くの企業がフレキシブルな働き方を実現していました。オンライン会議システムやクラウドベースのプロジェクト管理ツールを活用し、場所を選ばずに働ける環境が整っています。

人事管理、経費精算、勤怠管理などもすべてデジタル化されています。従業員はスマートフォンアプリから休暇申請や勤務時間の記録ができ、管理者はリアルタイムで状況を把握できます。こうしたデジタル化により、事務作業にかかる時間が大幅に削減され、本来の業務に集中できる環境が実現しています。

教育現場でのIT活用――そして見直しへ

スウェーデンでは2010年から従来の「教科書」という単語を「学習ツール」に置き換え、デジタル機器や教材を広く活用できるようにしました。2006年から学習用端末の「一人一台」配備が進められ、早い時期からデジタル教育の先進国として注目されてきました。

子どもたちは小学校からプログラミングを学び、タブレットやパソコンを使った授業が日常的に行われてきました。宿題もデジタル端末で行い、教師とのやり取りもオンラインプラットフォームを通じて行われるなど、ITを活用した教育が浸透していました。

しかし、2023年にスウェーデン政府は「教育のデジタル化で学力が低下した」として、学校での脱デジタル化に舵を切りました。実際、スウェーデンの子どもたちには「集中力が続かない」「考えが深まらない」「長文の読み書きができない」といった傾向が見え始めました。

そのため、2023年8月から、スウェーデン全土の学校では印刷された本や静かに本を読む時間、手書きの練習に重点が置かれるようになりました。政府は紙の教科書を各生徒に配布できるよう予算を確保し、学校の蔵書や図書館の整備・拡充を進めています。

デジタル教育を全面否定しているわけではありません。デジタル化が目的ではなく、手段になっている点が重要です。低学年では基礎的な読み書き計算能力を紙の教科書で学び、年齢が上がるにつれて教育学的な付加価値が認められるデジタル教材を段階的に導入する、というバランスの取れたアプローチを目指しています。

社会全体のデジタル化がもたらすもの

スウェーデンのIT事情を見ると、デジタル技術が生活を便利にする一方で、使い方を誤れば思わぬ弊害も生まれることがわかります。キャッシュレス化は効率性と安全性を高めましたが、高齢者やデジタル機器に不慣れな人々への配慮も必要です。教育現場でのデジタル化は、子どもの発達段階に応じた適切な導入が不可欠であることが証明されました。

スウェーデンは、IT先進国として新しい技術を積極的に導入しながらも、その影響を科学的に検証し、必要に応じて軌道修正する柔軟さを持っています。

まとめ:日本とスウェーデンの違い

出典:pixabay(https://pixabay.com/ja/)

ここまでご紹介してきたスウェーデンと日本の違いを、わかりやすく表にまとめました。

項目スウェーデン日本
人口約1,059万人約1億2,500万人
法定労働時間週40時間週40時間
年間労働時間約1,419時間(2022年)約1,607時間(2022年)
年次有給休暇最低25日(完全消化が原則)平均付与17.6日、取得率は約60%程度
育児休暇最長480日(両親で分割、父親専用90日)原則1年間(最長2年)
男性育休取得率約90%(日数ベースでは30%)約17.1%(2022年度)
教育費大学まで無償(給食費、教科書、文房具含む)義務教育は無償(高校は実質無償化)、大学は有料
大学入試なし(成績で判定)あり(共通テスト+個別試験)
キャッシュレス決済比率約60%約40%
ジェンダー・ギャップ指数第5位(2024年)第118位(2024年)

この表を見ると、スウェーデンと日本では働き方や子育て、教育に対する考え方に大きな違いがあることがわかります。もちろん、文化や経済状況、社会の仕組みが異なるため、スウェーデンの制度をそのまま日本に導入することは難しいかもしれません。

しかし、「自然と共に暮らしていくライフスタイル」「働く時間を減らしても生産性は上がる」「父親も母親も平等に子育てに参加できる」「教育の機会は経済状況に関わらず平等であるべき」「デジタル化によって効率的な生活」といったスウェーデンの考え方には、日本社会が学べることがたくさんあるのではないでしょうか。

「仕事も家庭も大切にしたい」「子どもともっと一緒に過ごしたい」――そんな願いを実現するヒントが、北欧の小さな国にはあふれています。

参考資料
・外務省「スウェーデン基礎データ」
JETRO「スウェーデン概況」(20257月)
・労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2025
・厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」
・スウェーデン統計局公式データ
・世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2024
・労働政策研究・研修機構「スウェーデンにおける仕事と育児の両立支援施策の現状」
IDEAS FOR GOOD「孫を世話する祖父母にも育児手当を。スウェーデンの新たな福祉制度」(202412月)
・在日スウェーデン大使館公認観光サイト

コメント

タイトルとURLをコピーしました