スウェーデンのキャラクター図鑑|リサ・ラーソンからピッピまで、愛される理由

スウェーデンの窓辺の読書コーナー。絵本が並ぶ木の本棚と、素朴な陶器の動物の置きもののイラスト アイテム

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猫のマイキー、長くつ下のピッピ、空を飛ぶ少年ニルス。

名前を並べてみると、「あ、どれも知ってる」と思われた方も多いかもしれません。でも、この3つがぜんぶスウェーデン生まれだと知っていましたか。

スウェーデンという国は、驚くほどキャラクターの宝庫でした。しかも、ただ可愛いだけではないのです。そこには「子どもをどう扱うか」という、この国の考え方がしっかり刻まれていました。

今日は、スウェーデン生まれのキャラクターたちを、その背景の物語とともに紹介します。

読み終わるころには、雑貨屋さんで見かけるあの子たちが、少し違って見えるかもしれません。

なぜスウェーデンは、キャラクターの宝庫なのか

スウェーデンでは、子どものための物語が「国の仕事」として作られてきた歴史があります。

たとえば、『ニルスのふしぎな旅』。あの空を飛ぶ物語は、もともと小学校の「地理の教科書」として発注された本でした。国民学校の先生たちの団体が、作家に「子どもたちがスウェーデンの地理を学べる本を書いてください」と依頼したのです。

教科書として頼まれた本が、いまや世界60以上の言語で読まれています。なんだか痛快な話ですよね。

さらに、公共放送が子ども番組を長く支えてきたこと。陶芸家やデザイナーの作品が、そのままキャラクターになっていく文化があること。そうした積み重ねが、この国に驚くほど豊かなキャラクターの層をつくりました。

そして何より——スウェーデンのキャラクターには、子どもを「小さくて未熟な存在」ではなく、一人の人間として描く空気が流れています。それが、大人が読んでも響く理由なのだと思います。

猫のマイキーと、リサ・ラーソンの手

日本でよく知られているスウェーデン生まれのキャラクターといえば、リサ・ラーソンの動物たちではないでしょうか。

とくに、まあるい輪郭に、少しだけ困ったような表情の猫マイキー。雑貨屋さんで見かけて、つい連れて帰ってしまった方も多いのではないでしょうか。

リサ・ラーソン(1931–2024)は、スウェーデンを代表する陶芸家です。1954年、工芸学校を卒業したばかりの彼女は、デザイナーのスティグ・リンドベリに見出されて、グスタフスベリという磁器工場に入りました。最初は「試用期間つき」の採用だったといいます。

そこで彼女が作り続けたのが、動物たちでした。ライオン、犬、猫、ハリネズミ。工場で量産される製品でありながら、一つひとつに手のぬくもりが残っている——そんな不思議な魅力を持つシリーズが次々に生まれます。

面白いのは、マイキーは陶器ではなく、リサのスケッチから生まれた絵本のキャラクターだということ。粘土をこねる手が描いた線が、絵本になり、雑貨になり、海を越えて日本の食卓にたどり着いたわけですね。

リサ・ラーソンは、2024年3月に92歳で旅立ちました。約70年という長い創作の日々でした。

でも、彼女が1992年にグスタフスベリに立ち上げた工房は、いまも続いています。日本でも、2025年12月から2026年2月にかけて東京で大きな展覧会が開かれ、たくさんの人が彼女の作品に会いに行きました。生み出された動物たちは、これからも私たちの暮らしのそばにいてくれます。

マイキーは、マグカップやタオル、キッチン雑貨などいろいろな形になって日本で手に入ります。暮らしのどこかに1匹だけ迎えてみたい方は、こちらからのぞいてみてください。

世界一つよい女の子、長くつ下のピッピ

赤い三つ編み、そばかす、ちぐはぐな靴下。馬を持ち上げてしまうほど力が強くて、大人の言うことをまったく聞かない女の子。

長くつ下のピッピが生まれたのは、1945年のことです。

作者はアストリッド・リンドグレーン(1907–2002)。挿絵はイングリッド・ヴァン・ニーマンが手がけました。

いま読んでも驚くのは、ピッピがとにかく自由なこと。学校にも行かず、お金の心配もせず、「こうしなさい」と言う大人を軽やかにかわしていきます。1945年という時代を考えると、なかなか大胆な女の子ですよね。

でもこれは、単なるわがままな子どもの話ではないのだと思います。子どもにも、自分で決める力がある——リンドグレーンはそう信じていた人でした。

日本では「困った子」と見られてしまいそうなピッピが、スウェーデンでは国民的ヒロインとして愛され続けている。この違いに、両国の子ども観の差が透けて見える気がします。

リンドグレーンは、ピッピのほかにもたくさんのキャラクターを残しました。たとえばエミール。1963年から始まったシリーズの主人公で、スモーランド地方の農場に住む、いたずらの天才のような男の子です。こちらは全12冊、44の言語に翻訳されています。

どの子も、大人に管理される存在ではなく、自分の足で立っているのが印象的です。

大人になってから読み返すと、子どもの頃とはまったく違う顔を見せてくれる一冊です。お子さんへの贈り物にも、ご自分の読み返しにもどうぞ。

教科書から生まれた冒険、ニルスのふしぎな旅

冒頭でも少し触れた『ニルスのふしぎな旅』。いたずら好きの少年ニルスが、小人にされてしまい、ガチョウの背中に乗ってスウェーデン中を旅する物語。日本でも1980年のアニメで親しまれた方が多いかもしれません。

この本、正式には『ニルス・ホルガソンのスウェーデン国内のふしぎな旅』といって、1906年と1907年に2部構成で出版されました。

そして先ほどお話しした通り、これは地理の教科書として依頼された本なのです。子どもたちに国土の姿を教えるために、作家が選んだ方法が「少年を小人にして、鳥の背中に乗せて、空から国じゅうを見せる」ことだった。発想が自由すぎませんか。

書いたのはセルマ・ラーゲルレーヴ。彼女は1909年、女性として初めてノーベル文学賞を受賞し、1914年には女性初のスウェーデン・アカデミー会員にもなった人です。

教科書として頼まれた本が、60を超える言語に翻訳され、100年以上読み継がれている。「学ばせるために書かれたもの」が、いちばん自由な物語になったというのは、なんだか勇気の出る話だと思いませんか。

アニメで見た記憶はあるけれど、本は読んでいなかった——という方は、意外と多いかもしれません。空からスウェーデンを眺める旅を、活字で味わってみるのもおすすめです。

日本ではまだ無名の、スウェーデンの国民的スターたち

ここからは、日本ではあまり知られていないけれど、スウェーデンの家庭では誰もが知っているキャラクターをご紹介します。現地の子育て世帯に聞けば、まず名前が挙がる顔ぶれです。

バムセ(Bamse)── 世界一つよくて、世界一やさしいクマ

おばあちゃんが作る「魔法のはちみつ」を食べると、世界一強くなるクマ。1970年代にはテレビシリーズも放送され、いまも子どもたちに親しまれている定番キャラクターです。

素敵なのは、バムセが「世界一強い」と同時に「世界一やさしい」と紹介されること。強さは戦うためではなく、困っている人を助けるためにある。しかも、味方だけでなく、敵であっても助けるのです。

奥さんのブルンメリーサと、4人の子どもたちと暮らしています。強いヒーローが所帯を持って子育てしている、というのも、なんだか北欧らしいですね。

ペットソンとフィンダス(Pettson och Findus)

おじいさんのペットソンと、おしゃべりでいたずら好きな猫のフィンダス。二人(一人と一匹?)の田舎暮らしを描いたシリーズです。

農場の何気ない日常が、フィンダスのおかげで毎回ちょっとした騒動になる。派手さはないけれど、暮らしそのものが物語になるタイプのお話で、北欧の空気がよく出ています。

アルフォンス・オーベリ(Alfons Åberg)

お父さんと二人で暮らす男の子、アルフォンス。彼にはモルガンという、目に見えない友だちがいます。

いたずらの言い訳にモルガンのせいにしてみたり、寂しい時にそばにいてくれたり。子どもの心の中を、そのまま形にしたようなキャラクターです。スウェーデンの公共放送で長く親しまれてきました。

日本ではなかなか出会えませんが、名前だけでも覚えて帰っていただけたら嬉しいです。旅行先の本屋さんで見かけたら、「あ、この子か」となりますよ。

「ムーミンってスウェーデン?」問題

ここで、多くの方がつまずくポイントに触れておきますね。

ムーミンは、スウェーデンのキャラクターではありません。 生まれはフィンランドです。

……とはいえ、「スウェーデンだと思っていた」という方を、私はまったく責められません。理由があるのです。

作者のトーベ・ヤンソンは、1914年にフィンランドのヘルシンキで生まれました。ただし彼女は、フィンランドの中のスウェーデン語を話す人々の出身でした。フィンランドには、母語がスウェーデン語という人たちが暮らしているんですね。

つまり、ムーミンの物語は、スウェーデン語で書かれています。

フィンランド生まれ、でもスウェーデン語。だから「スウェーデンっぽい」と感じるのは、ある意味で正しい直感なのです。ちなみにトーベ・ヤンソンは、フィンランドのスウェーデン語話者の間で行われた投票で「今世紀を代表する一人」に選ばれています。

北欧の国々は、こうして言葉や文化がゆるやかに重なり合っています。

まとめ:子どもを、一人の人間として見る国

スウェーデンのキャラクターを並べてみると、共通する空気が見えてきます。

  • リサ・ラーソンの動物たち ── 工場の量産品に、手のぬくもりを残す
  • ピッピ ── 大人の言いなりにならない、自分で決める女の子
  • ニルス ── 教科書のはずが、いちばん自由な冒険譚に
  • バムセ ── 強さは、誰かを助けるためにある

どれも、子どもを「言うことを聞かせる相手」として描いていません。一人の人間として、まっすぐ向き合っているのです。だからこそ、大人が読んでも心が動くのだと思います。

お気に入りのキャラクターをひとつ、暮らしのそばに置いてみる。それだけで、日常の景色がやわらかくなることがあります。あなたのお部屋には、どの子が似合うでしょうか。

一息ついて、がんばりましょ🍀

Fikaな暮らしでいいじゃない☕️

参考

  • リサ・ラーソン:SVT Nyheter、グスタフスベリ磁器博物館、リサ・ラーソン日本公式、PLAY! MUSEUM
  • アストリッド・リンドグレーン:The Astrid Lindgren Company 公式
  • セルマ・ラーゲルレーヴ/ニルス:Lärarstiftelsen、Barnens bibliotek
  • バムセ/ペットソンとフィンダス/アルフォンス:bamse.se 公式、Akademibokhandeln 他
  • トーベ・ヤンソン:Moomin 公式、Svenska Yle

※人物の情報・流通・価格は2026年7月26日時点のものです。最新情報は各公式サイト・各ショップでご確認ください。

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