「北欧に住んでみたい」と思ったことは、ありませんか。
フィーカのある暮らし、短い労働時間、あのシンプルで気持ちのいい部屋。
調べれば調べるほど、いいなあと思ってしまいます。
でも、そのあと必ず出てくるのがこの話です。
——「北欧って、税金がすごく高いんでしょう?」
これを聞くと、ふっと現実に引き戻されますよね。私もそうでした。
今回、スウェーデンの公的な資料をいくつか当たってみたのですが、正直おどろきました。
その50%、ほとんどの人には当てはまりません。
かといって「北欧は理想郷です」という話でもありませんでした。
今日は、憧れでも幻滅でもない、実際にそこで暮らしたらどうなるかをまとめてみました。
この記事では、以下のことがわかります。
・高い税金が意味するもの:心配の先払いでした。(教育費、医療、老後)
・移住するとしたら驚くこと:外の買い物は困るかもしれません。(金額、外食、お酒)
・住む場所はちょっと大変かも:都会のアパートは簡単には住めません。
・お金をかけない暮らし:人と人との繋がりが生む社会(森、公共施設、地域のクラブ)
まず、あの「50%」について

スウェーデンで多くの人が払っている所得税は、だいたい3割ほどです。
よく聞く「50%」は、かなり高い給料をもらっている人が、ある金額を超えた部分にだけ払う率でした。
日本でいえば年収1,000万円を大きく超えるあたりからの話で、しかも給料全体にかかるわけではありません。
消費税も「25%」と言われますが、これも全部ではないんです。
食料品は12%、バスや電車は6%。
毎日の食事と移動には、低い税率が用意されているんですね。
これなら少し安心できますね。
北欧は、家庭の時間を大切にします。
食料品の税率が外食より安いというのは、理にかなっています。
外で食事を楽しむ時もあるけれど、普段はお家でゆっくり料理をしながら家族で過ごす。
そんな時間が見えてきますね。
では、暮らしてみたらどうなるか
制度の話だけではなく、日々の場面で見ていきましょう。
外食はたまに

スウェーデンで暮らして、まず驚くのは外食の高さかもしれません。
ストックホルムでランチを食べると、日替わり定食でも2,000円台後半から3,000円ほど。
特別なお店ではなく、ふつうの定食です。
だから、みんな家でコーヒーを飲むんですね。
フィーカが家庭に根づいている理由って、文化だけじゃないのかもしれない——そう思うと、あの習慣が少し違って見えてきませんか。
水道の水は、日本に近い
コーヒーを淹れる水の話も。
ストックホルムの水道水は、軟水です。スウェーデンの基準で「やわらかい水」に入ります。
日本の水道水も軟水が中心なので、同じ仲間ですね。
数字で比べると日本より少しだけ硬めですが、水の感覚は日本とそれほど変わらないかもしれません。
飲み水はもちろん、料理やコーヒーの雰囲気、お風呂の後の仕上がりなど日本と変わらない雰囲気で過ごせそうです。
病院に行く

ここは、日本と大きく違うところでした。
スウェーデンには、1年間に払う医療費の上限が決まっています。
外来なら年間およそ2万4千円。
それを超えたら、あとは何度通っても無料です。
薬にも同じような上限があります。
「治療費がかかっちゃうから、病院に行くのをためらう」
そういう心配を、あまりしなくていい仕組みなんですね。
子どもを育てる

ここも手厚いです。
保育料には上限があって、収入の3%までと決まっています。
収入が少ない家庭ほど、負担が軽くなる作りですね。
学校の給食は無料。
大学まで授業料もかかりません。
スウェーデンでは、学生はお金を「もらえます」。
驚きですよね。
奨学金というと日本では「借りるもの」ですが、あちらには返さなくていい給付があるんです。
しかも子どもがいる学生には上乗せまである。
進学しても心配はない。
これは、各家庭で進学のためにお金を貯めなければならないという心配や、経済的理由で学ぶことを諦めてしまうなんていう心配がありません。
自由に、自分の本当に学びたいことを追究できます。
また、学校が始まる時間と終わる時間は、全国で決まっているわけではなく、学校や自治体ごとに違います。
そのかわり、放課後の受け皿がしっかりしています。
小学生は授業のあと、「フリーティス(fritidshem)」という学童のような場所で過ごせます。
自治体によっては朝6時台から夕方6時台まで開いていて、親の仕事が終わるまで見てもらえるんです。
放課後の過ごし方は、このあと週末の話でもう少しご紹介します。
働く
スウェーデンの働き方の基本は、週40時間。
1日8時間という働き方は、1919年から続いているそうです。
職場では、午前と午後に1回ずつ「フィーカ」の時間をとるところが多いんです。10〜15分ほど、仕事の手を止めてコーヒーを飲む。仕事中のお茶が、きちんと習慣になっているんですね。
有給休暇は、法律で年25日が最低ライン。出勤と退勤の時間をある程度自分で決められる「フレックス」の働き方もよく使われています。
子どもの迎えに合わせて早めに帰り、そのぶん別の日に調整する。そういう働き方が、特別なことではないのだと思います。
年を取る

老後はどうでしょう。
スウェーデンの年金には、働いた期間が短くても受け取れる最低保証があります。
金額でいうと、単身の方で月20万円ほど(税引き前)。
働き方によっては、ここに上乗せが入ります。
正直に言えば、贅沢ができる額ではありません。
物価を考えると、余裕があるとは言えない。
でも、「何もなくなる」という不安からは、少し遠いのだろうと思います。
それでも、貯金は増えにくいかもしれません

いいことばかり書いてきましたが、ここは正直にお伝えします。
給料は日本より高い。
でも物価も高くて、税金と社会保障で先に引かれる。
手元にどんどん貯まっていく暮らしではなさそうです。
「北欧は貯蓄しづらい」という声を見かけたことがありますが、この部分については、そのとおりだと思います。
でも、よく考えると、私たちはなぜ貯蓄をするんでしょうか?
- 老後の心配のため
- 子どもの学費のため
- 病気になって働けなくなった時の備え
- 家を購入するため
- 大きな買い物をしたいため
- 海外旅行に行きたいため
他にも色々あると思いますが、少なくとも1〜3の心配は、北欧には不要なようです。
そして、いちばん大きな壁

実は、お金よりも手前に大きな問題がありました。
住む家です。
スウェーデンの賃貸には行列があります。
登録して順番を待つ仕組みで、待った年数が長い人から部屋を選べる。
その待ち時間が、ストックホルムで平均9年。
都心なら20年を超えることもあるそうです。
……読み間違いではありません。年です。
もちろん郊外なら短くなりますし、家を買うという道もあります。
実際、スウェーデン全体で見るといちばん多いのは一戸建ての持ち家なんです。
「北欧=おしゃれなアパート」というイメージとは、少し違いますよね。
ちなみに日本の持ち家率は6割ほどですが、スウェーデンも同じく6割ほど。
移住したら、都会に暮らすのは、以外と苦労するかもしれません。
買い物で戸惑いそうなこと
もし移住したら、最初の1週間で驚きそうなことを2つ。
現金が、ほとんど使えません。
スウェーデンは世界でもっともキャッシュレスが進んだ国のひとつで、買い物で現金を使う人はもう1割もいないそうです。
銀行の窓口ですら、現金を扱わないところが増えています。
法律上は現金も使えるのですが、お店の側が「うちは現金お断り」と決めていいことになっているんですね。
でも、キャッシュレス決済が普及しているので、むしろ便利ですね。
お酒は、国営のお店でしか買えません。
度数の低いビールを除いて、スーパーやコンビニには置いていないんです。
専門のお店に行くことになるのですが、これが土曜は午後3時まで、日曜は休み。
「日曜にワインを買い忘れたら、月曜まで待つ」ということですね。
不便に聞こえますが、理由を知ると少し見方が変わりました。
販売から利益を切り離すことで、「たくさん売ろう」という動機そのものをなくす——それがこの仕組みの狙いなのだそうです。
スーパーは、日曜に開いていることも
お酒の店は日曜休みですが、ほかのお店はそうとは限りません。スウェーデンでは1972年から、お店の営業時間が自由になっているんです。日曜に開いているスーパーもあります。
大手スーパーのICA(イーカ)だけで、全国に1,300店ほど。薬や郵便の窓口、カフェが入っている店舗もあります。
ただ、地方では小さなお店が閉じていく問題も起きているそうです。都会と田舎で、暮らしやすさに差が出やすいところかもしれません。
中古品を買うのが、ふつうのこと
もうひとつ、日本と少し違うのが中古品との付き合い方です。
ある調査では、この1年でセカンドハンド(中古品)を買った人が4人に3人。理由でいちばん多いのはお金の節約で、9割の人が挙げています。環境のため、という人もたくさんいます。
大きな中古品店の多くはチャリティー団体が運営していて、売り上げは社会活動に回ります。週末には「ロッピス(loppis)」と呼ばれるフリーマーケットも、あちこちで開かれます。
移動は車。そして、鹿に気をつける
スウェーデンでは、人口1,000人あたり475台の車があります。
およそ2人に1台ですね。
日本の自家用車保有台数はおよそ6,000万台。こちらもおよそ2人に1台の割合です。
1台が1年に走る距離は、平均で1万2千キロほど。
都市部には電車やバスもありますが、郊外や地方では車が暮らしの足になります。
そして、日本とちょっと事情が異なるのが、動物とぶつかる事故がとても多いこと。
2025年に報告された件数は、7万件あまり。1日に200件ほどの計算です。
いちばん多いのはノロジカ(小型の鹿)で、ヘラジカやイノシシとの事故もあります。
ヘラジカはとても大きな動物なので、ぶつかれば車も無事ではすみません。
夕暮れや夜の運転には、かなり気をつかうのだろうと思います。
日本では、北海道で2025年の鹿との接触事故は過去最多の約6,700件。
スウェーデンの接触事故の多さがわかりますね。
では、週末は何をして過ごすのか

外食は高い。
日曜はお酒も買えない。お酒の店は土曜の午後3時で閉まる。
そう聞くと、「週末、何をするんだろう」と思いませんか。
私も気になって調べてみました。
答えは、拍子抜けするほどシンプルでした。
森へ行くんです。
自然保護区や湖に出かけて、焚き火でソーセージを焼く。
冬はソリを持っていって、春は虫眼鏡で虫を探す。
近所の遊び場で砂遊びをして、拾った木の実を並べて遊ぶ。
お金は、ほとんどかかりません。
サウナは、フィンランドほど身近ではない
北欧といえばサウナ、と思う方も多いかもしれません。
私もそう思っていました。
でも、スウェーデンではフィンランドほど身近ではないようです。
フィンランドは人口550万人ほどに対して、サウナが330万ほどあると言われる、まさにサウナの国。それに比べると、スウェーデンのサウナはもう少し控えめな存在です。
とはいえ、北部では今もよく入られていて、ある調査では月に1回以上入る人が6割を超えていました。
プールの施設などにある公共のサウナは、男女別で、裸で入るのが一般的です。
入る前にシャワーを浴びる、タオルを敷いて座る、大声で話さない。静かに温まるのがマナーなのだそうです。
遊ぶ場所は、自治体がつくる
「北欧は娯楽施設が少ない」という話を聞いたことがあって、調べてみました。
正直に言うと、日本と数を比べたデータは見つけられませんでしたが、、見えてきたことがあります。
遊ぶ場所の顔ぶれが違うんです。
スウェーデンの自治体のページを見ると、プール、体育館、アイスリンク、図書館、音楽教室、若者が集まれる施設、映画館——こうした場所を、自治体が運営したり案内したりしています。
お金を払って遊ぶ場所より、暮らしのそばにある公共の場所が中心。
週末に森へ行く文化と、どこかつながっている気がします。
「習い事」ではなく「クラブ」

もうひとつ、日本と大きく違うところがありました。
スウェーデンは地域のクラブ活動がとても盛んで、スポーツ、演劇、スカウト、写真と、驚くほど種類があります。
日本の習い事に近いようで、少し違うんです。
習い事はお金を払ってサービスを受けるもの。
あちらは、地域の人たちが自分たちで運営する集まりに近い。
親が送迎して、外で待っている——そういう光景も、あまり一般的ではないようです。
放課後には、子どもたちが集まれる公共の施設もあります。
しかもそこで何をするかは、子どもたち自身の希望で決まるのだとか。
大人が用意したメニューをこなすのではなく、子どもが「何をしたいか」から始まる。
そして、それを支える施設、社会がある。
お金をかける場所が、そもそも違う
こうして見えてきたのは、お金の使いどころが日本とは違う場所にあるということでした。
外食するより、家でコーヒーを淹れる。
遊びにお金をかけるより、森へ行く。
習い事に月謝を払うより、地域のクラブに入る。
節約している、というより、そもそもお金をかけるところがそこではないという感じでしょうか。
スウェーデンの人たちの気質
国民性をひとことで言うのは難しいですし、人それぞれです。
ただ、スウェーデンの暮らしを語るときによく出てくる言葉がいくつかあります。
ひとつは「ラーゴム(lagom)」。
多すぎず、少なすぎず、ちょうどいい、という意味です。
もうひとつは「アッレマンスレッテン(allemansrätten)」。
自然享受権と訳されることもあり、誰でも森や湖に入って、ベリーやキノコを摘んでいいという考え方です。
合言葉は「邪魔しない、壊さない」。
週末に森へ行く文化は、この権利に支えられているんですね。
そして、よく言われるのが人と人との信頼の高さです。
約束や決まりごとを守る、という感覚が暮らしに根づいていると言われます。
反対に、「ヤンテの掟(jantelagen)」という言葉もあります。
「自分が特別だと思うな」という戒めのようなもので、目立つことを控える空気として語られることが多いようです。
本当の論点は、税率じゃなかった

ここまで調べてきて、いちばん考えさせられたのはここでした。
スウェーデンの人たちは、なぜこの負担を受け入れているんでしょう。
税金についての研究に、こんな指摘がありました。
その税が何のためのものか、見えていることが大切である
税務署への信頼度も、とても高いのだそうです。
理由に挙がっていたのは「連絡が取りやすい」「答えが明確」「扱いが公平」といった、ごく地道なことばかりでした。
つまり——
高い税金に耐えているのではなく、何に使われているかが見えているから納得している。
そういうことなのだろうと思います。
病院代の心配がいらないこと。
大学までお金がかからないこと。
子どもが熱を出したら休めること。
払ったものが、生活のどこで返ってきているか、手触りで分かる。
そこが大きいのではないでしょうか。
まとめ:どちらが安心できるか、という話
こうして並べてみると、「北欧は理想郷」でも「税金地獄」でもありませんでした。
手元に残るお金は少ない。
でも、病気や教育や老後の心配は少ない。
先に払っておくか、あとで自分で備えるか。
その違いなのだと思います。
どちらが安心できるかは、その人が何を不安に思うかで変わりますよね。
貯金が増えないことが不安な人もいれば、この先の医療費や学費が不安な人もいます。
我が家は日本で暮らしていますが、この違いを知ってから、少しだけものの見え方が変わりました。
私たちが貯金をする理由って、だいたい決まっていますよね。
老後、教育費、病気。
この3つのために、せっせと備えている方が多いのではないでしょうか。
スウェーデンは、その3つを税金で先に払ってしまう国でした。
だから手元にお金は残らないけれど、貯め込む理由も薄い。
先に払っておくか、あとで自分で備えるか。
どちらが得かという話ではなく、順番が違うだけなのかもしれません。
もうひとつ、考えさせられたことがあります。
あちらの人たちが週末に楽しんでいたのは、森を歩くこと、焚き火を囲むこと、家族と過ごすことでした。
あまりお金のかからないものばかりです。
お金をかけない楽しみ方を知っていると、そんなに稼がなくてもよくなる。
稼がなくていいと、家族といる時間が残る。
——そういう順番も、あるのかもしれませんね。
北欧の家具や暮らし方に惹かれるとき、その向こうにこういう仕組みや考え方があることも、頭の片隅に置いておきたいなと思っています。
あなたなら、どちらの暮らしが安心できそうでしょうか。
(北欧の働き方については[ノルウェーの子育て・教育・働き方]でもご紹介しています。)
一息ついて、がんばりましょ🍀
Fikaな暮らしでいいじゃない☕️
参考
- 税率:Skatteverket(スウェーデン税務庁)、Ekonomifakta
- 医療費の上限:1177(公的医療情報サイト)、E-hälsomyndigheten
- 育児・児童手当:Försäkringskassan(社会保険庁)
- 学生への給付:CSN(中央学生支援委員会)/保育料:Skolverket(学校庁)
- 年金:Pensionsmyndigheten(年金庁)
- 生活費:Konsumentverket(消費者庁)
- 住まい:SCB(スウェーデン統計庁)、ストックホルム住宅仲介所の公表データ
- 日本の持ち家率:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」
- 現金の利用状況:Riksbank(中央銀行)推計
- 酒類の販売制度:IQ、Systembolaget
- 税への態度:Skatteverket、スウェーデン議会の報告
- 学童(fritidshem)の開所時間:各自治体の公式ページ(Halmstad、Solna、Sigtuna ほか)
- 働き方:Arbetsmiljöverket(労働環境庁)の労働時間法の解説、労働組合の案内
- 水道水の硬度:Stockholm Vatten och Avfall(ストックホルム上下水道)/日本の水道水:東京大学の全国硬度分布調査
- 車:Trafikanalys(交通分析庁)「Fordon i län och kommuner 2025」
- 動物との事故:Nationella viltolycksrådet(全国野生動物事故協議会)、Naturvårdsverket(環境保護庁)
- サウナ:UNESCO「Sauna culture in Finland」(フィンランドのサウナ数)、Luleå tekniska universitet の調査、Hufvudstadsbladet ほか
- 営業時間:スウェーデン商業史の資料(1972年の営業時間自由化)
- 中古品:Myrorna の調査報告、SVT
- 自然享受権:Svenskt Friluftsliv、Naturvårdsverket
※制度は変わります。数字は2026年8月時点のもので、円の金額は当時のレート(1クローナ=約16.7円)による目安です。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。 ※この記事は制度の紹介であり、移住を勧めるものでも、控えるよう促すものでもありません。







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