北欧の食器を選ぼうとすると、必ずといっていいほど、2つの名前にたどり着きます。
イッタラ(Iittala)と、アラビア(Arabia)。
どちらもフィンランド生まれ。どちらも日本で大人気。じゃあ、何がどう違うの?——我が家にもアラビアのマグカップがありますが、買った当時はこの2つの区別がよく分かっていませんでした😅
実はこの2ブランド、調べてみると「兄弟」のような間柄なのです。しかも性格は正反対。今日は、2つのブランドの物語をたどりながら、「あなたの食卓にはどちらが合うか」まで、一緒に考えてみたいと思います。
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実は「兄弟ブランド」——2つの意外な関係

イッタラとアラビアは、現在、同じグループ会社(フィンランドのフィスカース・グループ)に属する、いわば兄弟ブランドです。ライバルというより、同じ家の中の「性格の違う兄弟」なんですね。
生まれた時期も近く、ルーツもよく似ています。
- アラビア:1873年、スウェーデンの磁器メーカー・ロールストランドが、ヘルシンキ郊外に建てた磁器工場から始まりました。ブランド名は、工場が建った**地区の名前「アラビア」**から。中東のアラビアとは関係がない、というのはちょっと面白いところですね。
- イッタラ:その8年後の1881年、フィンランド南部のイッタラ村で、スウェーデンから17人のガラス職人を招いて始まったガラス工場です。
どちらも「スウェーデンの力を借りて生まれ、フィンランドの誇りに育った」ブランド。ここまではそっくりです。でも、その後に歩んだ道が、見事に対照的でした。
イッタラ——「かたち」を磨き続けたブランド
イッタラを象徴するのは、「かたち」の美しさです。建築家アルヴァ・アアルトが湖岸のような曲線を吹きガラスにした「アアルト・ベース」(1936年)。そして、デザイナーのカイ・フランクが「円・四角・長方形」という基本のかたちだけで設計した食器シリーズ「ティーマ(Teema)」。
ティーマには絵柄がありません。無地で、シンプルで、どの色・どのピースを組み合わせても不思議と食卓がまとまる。「必要なものを、必要なぶんだけ揃えればいい」という、フランクの「節度」の哲学がかたちになった食器です。
我が家のティーマも、購入から時間が経ちますが、飽きるどころか、どんな料理にもすっと馴染んでくれる「毎日の定位置」になっています。
お気に入りは毎日使う。それが一番です😊
アラビア——「絵と物語」を描き続けたブランド
一方のアラビアが磨いたのは、「絵」と「物語」でした。
アラビアの黄金期を支えたのは、個性豊かなアーティストたちです。その代表格が、ビルゲル・カイピアイネンが1969年に生んだ「パラティッシ(Paratiisi)」。フィンランド語で「楽園」を意味するこのシリーズは、白い磁器いっぱいに、果実と花が大胆に描かれています。ティーマの「無地の美」とは正反対の、「絵の力」で食卓を彩る食器です。
そしてもうひとつ、日本でおなじみなのが「ムーミンマグ」。ムーミンの生みの親トーベ・ヤンソンの原画をもとに、デザイナーのトーベ・スロッテが食器用に描き起こしたシリーズで、現在まで続くかたちになったのは1990年から。最初の製品は、ヤンソン本人が目を通して承認したそうです。以来30年以上、季節や物語の場面ごとに新作が生まれ、世界中にコレクターがいます。
我が家もムーミンマグを夫婦で愛用しています😊

かたちのイッタラ、絵のアラビア。同じ家に生まれた兄弟が、それぞれまったく違う才能を伸ばした——そんな関係なのですね。
イッタラとアラビア、2つのブランドをつなぐ、1枚の食器の旅
「兄弟」の証拠のような、素敵なエピソードがあります。
イッタラの代表作ティーマ——実はこの食器、最初はアラビアから生まれました。
デザイナーのカイ・フランクは、もともとアラビアで腕をふるった人。彼が1952年にアラビアから発表した食器シリーズ「キルタ(Kilta)」こそ、ティーマの前身です。キルタは一度生産を終えますが、1981年、今度はイッタラの「ティーマ」として生まれ変わり、現在まで愛され続けています。
同じデザイナーの、同じ思想の食器が、兄弟ブランドのあいだを旅して生き続けている。イッタラとアラビアが「どちらが上」ではなく、フィンランドの食卓文化をふたりで支えてきたことが伝わる物語だと思います。
イッタラとアラビアはフィンランド製!?
購入を考える方のために、ひとつ正直にお伝えしておきたいことがあります。
アラビアのヘルシンキの工場(アラビア地区)は、2016年にフィンランド国内での生産を終了しました。現在のアラビア製品は、タイやルーマニアなど海外の提携工場での生産が中心です。一方、イッタラのガラス製品の多くは、いまもフィンランドのイッタラ村の工場で作られています。
ただし、これはあくまで「ガラス製品」の話。イッタラでも、ティーマのような陶器のシリーズは海外の工場で作られています。「フィンランド製」といえるのは、アアルト・ベースやカルティオといったガラスの名品が中心なのですね。
「フィンランドの工場製にこだわりたい」という方は、購入時に生産国の表示を確認してみてください。なお、旧アラビア工場の街区はいまも「デザインの聖地」として残っていて、イッタラ&アラビアのデザインセンターや博物館が置かれています。ヘルシンキを旅する機会があれば、立ち寄る価値のある場所です。
シンプルならイッタラ、華やかさならアラビア
最後に、実用的な結論を。どちらも素晴らしいブランドなので、「あなたの食卓に何を求めるか」で選ぶのがおすすめです。
- シンプルに、長く、組み合わせ自由に使いたい → イッタラ(ティーマ、カルティオ)。無地なので和食にも洋食にも合い、買い足しても統一感が崩れません。「最初の北欧食器」に迷ったら、まずこちら。
- 食卓に華やかさや物語がほしい → アラビア(パラティッシ、ムーミンマグ)。絵柄の力で、いつものテーブルがぱっと明るくなります。贈り物にも喜ばれやすいのはこちら。
- 迷ったら、混ぜてOK → もともと同じ源流を持つ兄弟なので、ティーマの無地にパラティッシを一枚差す、ムーミンマグを添える——実はとても相性がいいのです。
我が家も、少しずつ「絵のある一枚」を足していくのが、いまの楽しみになっています。
兄弟だから、けんかしない食器たち
イッタラとアラビア。1873年と1881年にスウェーデンの力を借りて生まれ、「かたち」と「絵」というまったく違う道を歩み、いまは同じグループでフィンランドの食卓を支える兄弟ブランド。
どちらかを選んでもいいし、両方を混ぜてもいい。兄弟だから、同じ食卓に並んでもけんかをしません。あなたの毎日の食卓に、フィンランドの物語をひとつ、迎えてみませんか。
一息ついて、がんばりましょ🍀
Fikaな暮らしでいいじゃない☕️
参考
- イッタラの歴史:Iittala 公式、thisisFINLAND、Alvar Aalto Foundation 他
- アラビアの歴史:Arabia(Wikipedia)、Encyclopedia of Design、Design Forum Finland 他
- ムーミンマグ:moomin.com 公式ブログ(Tove Slotte インタビュー等)、Fiskars Group
- キルタ/ティーマ:Finnish Design Shop(Teema 70周年記事)他
※歴史・流通・生産国・価格の情報は2026年7月6日時点のものです。最新情報は各公式サイト・各ショップでご確認ください。





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